guild-x

いろんなニュースについて思った事を書きます。

子どもへの医療拒否に悩む医療現場、宗教と救命措置のバランスが問われる

2023年05月05日

最近の毎日新聞の調査によると、全国の55病院のうち約3割が過去10年間に宗教を理由に子どもへの医療拒否を経験しました。厚生労働省は子どもへの医療拒否を虐待としていますが、宗教的信念に反して輸血された成人患者に対して賠償を命じる判例もあります。今回は、この問題に関する様々な視点を分析し、医療現場が直面する苦悩と対応策を考察していきます。

医療拒否の事例と背景

調査結果によると、2013~2023年の間に宗教を理由に子どもへの医療拒否が確認された件数は48件でした。これらの拒否内容は、「輸血」が最も多く13件、「投薬」が6件、「予防接種」「受診・入院」「手術」がそれぞれ3件でした。宗教による医療拒否の背景には、信仰に基づく価値観や教義が存在し、それに従わないと信者の罪が重くなると信じられていることが一因です。

医療現場の苦悩と対応

子どもの医療拒否に対する対応は、「保護者を説得した」が最も多く8件、「児童相談所や自治体に通告・相談した」が6件、「転院先や他の医療機関を紹介した」が5件でした。しかし、医療従事者は対応に迷い、子どもの意思確認の難しさを感じることが多いという。実際、「対応に迷ったか」という設問では、8病院が「迷った」と回答しました。

子どもの意思確認の難しさ

子どもがまだ幼い場合、本人の意思を確認することは困難です。そのため、保護者の意向が強く反映されることになります。しかし、医療従事者にとっては、子どもの命を救うことが最優先であり、保護者の信仰による医療拒否が子どもの生命を脅かす状況に置かれることに懸念があります。このような状況で、適切な対応を取ることが求められますが、それは決して容易なことではありません。

医療現場でのバランスの取り方

生命の危険がある場合は親の同意が得られなくても輸血や治療をするかという問いに対して、31病院が「する」と回答しました。「しない」という回答はゼロで、「どちらともいえない」が16病院でした。この結果は、医療現場が救命を最優先としながらも、宗教的な信念や保護者の意向に配慮しながら対応を取ろうとしていることを示しています。

判例と法的問題

宗教的信念に反して輸血された成人患者が病院側に賠償を命じる判例があることから、医療現場は法的な問題にも配慮しながら対応を取らなければなりません。これにより、宗教による医療拒否に対する対応が一層複雑化しています。

エチカルな問題

宗教による子どもへの医療拒否は、エチカルな問題としても考えられます。例えば、医療従事者が患者の生命を救うために最善を尽くす義務がある一方で、信仰の自由を尊重し、患者や保護者の意志に従うべきかという問題が浮かび上がります。

問題解決のための提案

医療現場が直面する宗教による子どもへの医療拒否問題に対処するためには、以下のような提案が考えられます。

    1. 法的な規定の整備:子どもへの医療拒否に関する法的な規定を整備し、医療現場がどのように対応すべきか明確にすることが求められます。
    2. 医療従事者の教育と研修:医療従事者に対して、宗教的信念や文化的背景に配慮した対応ができるよう、教育や研修を充実させることが重要です。これにより、医療現場での苦悩を軽減し、患者と保護者への適切な対応が可能となります。
    3. コミュニケーションの重視:医療従事者と患者・保護者とのコミュニケーションを重視し、互いの立場や意見を理解し合うことが大切です。適切な対話を通じて、信仰による医療拒否問題の解決に向けた協力関係を築くことが求められます。
    4. 専門家や関係機関との連携:医療現場が宗教的信念による医療拒否問題に対処するために、専門家や関係機関と連携を深めることが必要です。法律家、宗教学者、児童福祉の専門家などとの協力を通じて、問題解決のための多角的なアプローチを模索することが望まれます。
    5. 社会全体での理解と支援:宗教による子どもへの医療拒否問題は、医療現場だけでなく、社会全体での理解と支援が必要です。一般市民やマスメディアが問題に対する認識を高め、適切な情報提供や支援を行うことで、医療現場が適切な対応を取りやすくなります。

まとめ

宗教による子どもへの医療拒否問題は、医療現場が直面する深刻な課題です。法的、エチカル、そして医療現場の実情に配慮しながら、問題解決に向けた取り組みが必要です。医療従事者の教育や研修の充実、適切なコミュニケーションの重視、専門家や関係機関との連携、そして社会全体での理解と支援が、宗教による子どもへの医療拒否問題の解決に向けて重要な要素となります。これらの取り組みを通じて、子どもたちの生命と健康を守るためのバランスを見つけることができるでしょう。